国際的な大気汚染への取り組み

国際的な大気汚染への取り組み

国際的な大気汚染への取り組み

当たり前の話しですが、大気汚染は国内の問題だけではありません。中国での大気汚染が日本やその他の国々に影響しているように、国をまたいだ規模に拡大していき、現在では多くの国に影響を与える「広域大気汚染」が問題となっています。
 
では、「国際的な大気汚染への取り組みとは」という点についてご説明いたします。
 
複数の国が協力して観測体制を構築した最初の例を考えてみましょう。そうです、それは「酸性雨被害」です。それは被害が雨というかたちで国を超えて広範囲に広がること、また酸性雨の測定が雨水のpHを測定するという、観測しやすい項目であることも関係しています。
 
酸性雨
 
ヨーロッパでは、1950年代からノルウェーやスウェーデンなどの北欧で湖沼や河川が酸性化して魚などが激減したり、木々が立ち枯れて森林が衰退したりする現象が起きていました。国や関係者は「一体、これは何が原因でこうなっているのだ!」と、大変驚き、すぐにその原因を調査しました。しかし、両国は急いで調査をしましたが、いくら調査をしても国内にはその原因らしきものが見つかりません。やがて、調査をしていくうちに分かったことは、「汚染物質は国内ではなく、ヨーロッパ中部から運ばれてきた」ということが判明したのです。
 
国を超えた因果関係であるため、スウェーデンの政策担当者は、経済協力開発機構(OECD)に酸性雨モニタリングのための国際共同プロジェクトの実施を呼びかけ、1972年には大気汚染物質の国際共同プロジェクトが発足しました。これらの情勢を背景に1977年には、国際欧州経済委員会が事務局となって、欧州における大気汚染物質の長距離輸送評価・監視のための共同計画が発足し、ヨーロッパ全域に酸性雨の測定網が広げられました。
 

長距離越境大気汚染条約の締結

 
その後、得られた科学的知見をもとに、国際交渉が行われた結果、歴史上初の越境大気汚染に関する国際条約「長距離越境大気汚染条約」が1979年に締結されました。(1983年発効)
 

1984年EMEP議定書(資金供与について定めた議定書)
1985年ヘルシンキ議定書(SOxの30%削減)
1988年ソフィア議定書(NOxの削減)
1991年VOC規制議定書
1994年オスロ議定書(SOxの削減)
1998年重金属議定書
1999年POPs議定書
1999年酸性化・富栄養化・地上レベルオゾン低減議定書

 
ヨーロッパ諸国を中心にアメリカ、カナダ、ロシアなど、49カ国が加盟していますが、日本は加盟していません。
 

アジアでの取り組み〜中国の大気汚染問題

 
中国の大気汚染問題は、今や、どなたでもご存知だと思います。汚染の主な原因は、渋滞した車から出る排気ガスです。少し前まで、中国都市部の大気汚染は、砂塵と石炭の燃焼による煤煙を主とした汚染でした。しかし、経済が発展し、工場の排出ガスや自動車の排気ガスなどに変わっていったのです。
 
北京オリンピックで日本は約500個の特殊な防塵マスクを持参して防衛し、アメリカも希望した選手約200名にマスクを支給するなどしました。これに対し、北京市はメンツをかけて汚染源となる化学工場などの操業停止や製鉄所の移転、車のナンバーで振り分けて市内走行を禁止する交通規制をかけるなどして、市民には不便を強いながらも、総動員体制で徹底的に汚染源の抑制を行いました。特に、「車のナンバーで振り分けて市内走行を禁止する交通規制」というのは有効です。実際にこれを行っている国はシンガポールをはじめとする各国では、それを裏付けるデータがとれています。
 
その結果、オリンピック直前までの評価とは異なり、大会期間中は大気汚染が予想以上に改善されたのです。しかし、残念なことにそれは一時的な中国の「メンツ」にかけた対応であり、オリンピックが終わり10月に入ると、化学工場の操業再開、車のナンバー規制解除、それに加え、暖房の時期を迎え石炭が使用されたことで、北京の空はまた霞んでしまったというわけです。
 

国境を超えて広がる問題は各国の責任ある対応が求められる

 
1989年、NASAがとらえた北半球の衛星写真には、重慶、ニューデリー、ムンバイ、バンコク、カイロなど大都市の上空に広大な褐色の雲が写り、大気汚染の専門家に衝撃を与えました。この雲は、工場や自動車から排出された窒素酸化物や硫黄酸化物、一酸化窒素などからできており、国連環境計画はこれを「ブラウンヘイズ(褐色の煙霧)」と名づけました。
 
この汚染物質は各国へと広がり、そこで太陽の紫外線によって化学反応を起こし、地表付近のオゾンを増やすことが問題となっています。高度数十kmの上空にあるオゾン層のオゾンは、太陽からの有害紫外線を吸収し、生物が地表で生活できるという恩恵をもたらしてくれていますが、地表付近にあるオゾンは光化学スモッグを引き起こし、呼吸器疾患の患者を増やし、農作物を枯らしてしまうという災害をもたらします。
 
世界のPM2.5の濃度分布を調べるには、多数の観測機器を地上に設置する必要がありますが、開発途上国でそのような機器を展開することは不可能です。このため、人工衛星に搭載された分光放射照度計を使って観測が試みられています。発展途上国の大気汚染については、観測機器が少ないことに加え、政府が積極的に情報を公表しないという事情がありますが、国境を越えて広がる問題であり、各国の責任ある対応が求められています。

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