界面活性剤の分子構造
油で汚れてしまった食器を水に浸けても、食器についた油は取れにくく剥がれません。しかし、洗浄剤をいれると油汚れは簡単に取れます。これは、洗剤に含まれている、「界面活性剤」の様々な作用が組み合わさって油汚れを除去しているからなのです。界面活性剤は、界面(水と油、水と空気など)の間にかかる力(界面張力)を下げることができます。
また界面活性剤を水に入れると、界面活性剤の水になじみやすい「親水基」の部分は水の中で安定ですが、水になじみにくい「疎水基(親油基)」の部分は不安定になるため、水面に集まります。さらに界面活性剤を入れ、もう水面が埋まってしまっている場合、疎水基どうしが集まり合って、集団をつくります。これをミセルと言います。ミセルは内側に疎水基を、外側に親水基を向けているため、水の中でもある程度安定で、内側部分に油を取り込むことができます。
汚れを取り除くしくみ
では、油汚れがついた食器が入っている場合はどうなるかと言うと、疎水基は油になじみやすいため、油汚れにつきます(吸着作用)。たくさんの界面活性剤が汚れにつくと、界面活性剤は界面張力を下げるため、汚れの奥にまで入り込むことができます(湿潤•浸透作用)。これにより、油汚れが食器に付着する力よりも水に引っ張られる力のほうが強くなり、界面活性剤がついたまま水中に浮かび上がります。
水中に浮かんだ汚れは、小さな汚れに分割されて、その小さな汚れは界面活性剤が作るミセルの内部に包まれるため、もう食器につかず、水の中に残ったままになります(乳化•分散•可溶化作用)。界面活性剤を使った洗浄剤は、このような作用で汚れを取り除きますが、私たちの身の回りには、「中性洗剤」「アルカリ洗浄剤」などいろいろな洗浄剤があり、界面活性剤以外の作用で汚れを落すものもあります。
汚れを落とす三つの要素
水がもっとも一般的な溶剤
ものの汚れを落とそうとするときには、「水ですすぐ」「スポンジに洗剤をつけて、食器をこすり洗う」「洗濯機に洗剤を入れて洗濯する」「クリーニングに出す」など、いろいろな方法があります。ここでは汚れを落とす要素について説明しましょう。まずひとつ目の要素は「溶剤」です。
溶剤と言うとわかりにくいですが、普通の洗浄では「水」が溶剤となります。汚れが水に溶けやすいものであれば、水で洗浄するだけで汚れを落とすことができます。水以外の溶剤を利用する例としては、ドライクリーニングで使用する有機溶剤、爪に塗ったマニキュア落とす除光液などがあります。二つ目の要素は「物理的作用」です。
お皿をスポンジでこすったり、手洗いで洗濯をするときに衣類と衣類をこすったりするときには、「摩擦力」が働きます。洗濯機では、洗濯槽が揺れ動くことによって「攪拌力」が働きます。食器洗浄機は、洗浄ノズルから高圧の水がふき出して「圧力」が働きます。これら以外にも「超音波」「静電気」など、様々な物理的作用があります。三つ目の要素は「洗浄剤」です。
界面活性剤を利用した洗浄剤が一般的ですが、その他にも、アルカリ、酸、塩素系漂白剤、酸素系漂白剤などがあります。これらの説明は後の章でくわしく述べますが、水と組み合わせることで、水では落とせない汚れを落とすことができるようになります。
使用方法・マニュアルを理解する
この三つの要素をうまく組み合わせることで、よりよい洗浄を行なうことができます。洗浄剤を製造するメーカーは、発売前に様々な試験を行ない、その結果をもとに「使用方法」を定めているので、これを参考にすれば、洗浄剤を効果的に使用できるでしょう。また全自動洗濯機や自動食器洗浄機などは、三つの要素がうまく組み合わさるように設計されているので、使用マニュアルをよく理解することも大切です。
界面活性剤の四つの種類
汚れを落とす三つの要素の中のひとつに、「界面活性剤」を利用した洗浄剤がありましたが、界面活性剤にも様々な種類のものがあり、その特徴によって四つの種類に分けることができます。
①陰イオン界面活性剤
陰イオン界面活性剤は、水に溶かすと親水基のついている部分がマイナスの電荷を持った陰イオンとなって界面活性作用を示します。石鹸の成分である脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウムも陰イオン界面活性剤です。泡立ちがよく泡の持続性が高いことから、中性洗剤、シャンプーなどの主原料として使用されています。
②陽イオン界面活性剤
陽イオン界面活性剤は、水に溶かすと親水基親水基のついている部分がプラスの電荷を持った陽イオンとなって界面活性作用を示します。陰イオン界面活性剤と比較すると洗浄力は弱いのですが、プラスの電荷を持つため、繊維の柔軟仕上げ剤や帯電防止剤、頭髪用のリンス剤に使用されます。また殺菌効果があり、微生物に有効なことから殺菌•消毒用にも使用されています。
③非イオン界面活性剤
非イオン界面活性剤は、水に溶かしてもイオンになりませんが、界面活性作用を示します。イオンにならないため、水の硬度や電解質の影響を受けにくく、使いやすいという特徴があります。最近は性能面も向上して、陰イオン界面活性剤と並ぶ主力の界面活性剤になっており、中性洗剤、シャンプーなどの主原料として使用されています。
④両性界面活性剤
両性界面活性剤は、水に溶かすと親水基のついている部分がプラスとマイナスの両方の電荷を持っており、その特徴は水素イオンの濃度によって変化します。液性がアルカリ性のときは、陰イオン界面活性剤の特徴が強く出ますが、酸性のときは、陽イオン界面活性剤の特徴が強く出ます、そのため帯電防止剤、殺菌剤として配合されたり、洗浄原料としても配合されます。
洗浄を突き詰めて考えると脱臭にいきつく
洗浄や消毒ということを突き詰めて考えると、「脱臭」にいくつきます。
脱臭とはどういうことかというと、たとえば、オゾンがまっさきに思い浮かびます。オゾン、つまりO3は不安定な物質のため、何かと結合するとすぐに消えてなくなります。正しくは酸素に戻り無害化されます。
野菜や果物などの食品洗浄に使われているのがオゾン水ですが、そのオゾン水だけではなく空間の消毒・殺菌もやってのけるのがオゾン脱臭機です。
オゾン脱臭機の中には、気体のオゾンを放出し、空間を殺菌消毒するものだけではなく、それに加えてオゾン水を生成できる機種があります。これは大変利便性に優れていることからもっともっと世の中に普及してほしいと願っています。ひと昔前までは、業務用が主でしたが最近では家庭用のオゾン脱臭機も広く出回っていることから、これからはより認知度が高まるでしょう。
近年では主にペット臭の問題解決にオゾンが活用されるケースが増えているようです。
ペットにとっても、飼い主にとっても、快適で過ごしやすい環境づくりに是非お役立ていただければと思います。
(参考リンク)
界面活性剤とは? 花王