オゾン水

オゾン水

オゾン水と殺菌剥離

酸化力の強いオゾンの利用は、小容量から大容量まで幅広い分野に及んでいます。クリーンルーム内の半導体製造におけるウェハー表面の有機膜除去や不純物洗浄等と多方面で利用され、また、街のクリーニング店では洗濯の一部にも利用されています。さらに付着した微生物に関しては、オゾン水との接触による殺菌剥離が可能なため、ビール、食品工場の配管内洗浄、高層住宅の給排水管内の洗浄、膜処理設備の目詰り原因の微生物の除去に利用されている。ここでは、オゾン水による微生物剥離と高層住宅の給排水管洗浄例を紹介します。

オゾン水による付着微生物の剥離

オゾン水で付着微生物が剥離される現象を、ガラス表面に微生物を付着させ、オゾン水と接触させて菌数がどのように変化するか顕微鏡を用いて調べてみたという研究があります。

微生物は、クーリングタワー等の冷却水系で障害を起こすズーグレアを用いた。菌を分散させ、栄養分を加え、一定温度で循環させた水中に顕微鏡観察に用いるスライドグラスを一定時間垂直に吊るし、ガラス表面に微生物を付着させた。単位面積あたり一定の菌数になる条件でスライドグラスを引き上げ、次に一定オゾン濃度、一定流量の中に静かにスライドグラスを入れ、所定時間後に表面に残る菌数を調べた。

オゾン水に接触させる前後の顕微鏡写真各3枚から平均の菌数を求めた。オゾン水を含まない水での接触では、表面流速が比較的速くてもほとんど剥離せず、微生物の付着粘着力の強いことが分かった。オゾン濃度が0.2mg/L以上となると微生物の剥離が認められ、5分で約半分、60分で90%程度除去されることが分かった。これらは気泡の入らないオゾン水の条件で得られた結果であり、微生物自身がオゾンを感知し、他へ移動するのか、殺菌と同時に粘着物質が酸化され脆くなり剥離するのかは不明です。オゾンには従来から知られていた殺菌力だけではなく、このような剥離力をもっていることが証明された。

高層住宅の給排水管洗浄とオゾン水

オゾン水生成器は、一般の人の目に触れないだけでさまざまな場面で活躍しています。高層住宅の屋上にある高置水槽では、管理が悪いとネズミや小鳥が入ったり、残留塩素がなくなり藻が生えたりして、浄水場で高度に浄化した水道水が再び汚染される心配がある。水槽の点検、掃除等が設置者に義務付けられているが、水との接触の1番多い給水配管は忘れられている。今日、残留塩素の添加を少なくする方向にあり、配管内部の微生物学的な検討も重要だといえる。

鉄細菌による錆瘤の問題点は、残留塩素がなくなり微生物が給水配管内面に生成し、これらが死滅すると水道水の味を著しく低下させることです。そこで、オゾン水による配管洗浄が有効です。工事期間だけ高濃度のオゾン水を配管内へ流し込めるようにし、水道水にオゾンを溶解させ、高流速で配管内へ流し込む。オゾン水とオゾン化空気の気泡を同時に流し込めば、洗浄初期は赤錆の排出のため都合が良い。各階、各部屋の蛇口を開け、洗浄排水を排出させれば、数分間、赤錆の混ざった排水が流れ、次第にオゾン臭気が感じられ、きれいなオゾン水の流れとなります。

オゾンは放置しておくだけで分解するため、洗浄後、直ちに水道水に切り替えての仕様が可能となります。オゾンは本当にここがすごいですね。オゾンは、殺菌、ウイルスの不活化に効果的であり、そのまま洗浄の仕上げとなります。ただ、洗浄排水からオゾンの一部が室内へ漏れるため、子ども、病人、老人への事前の注意が必要です。

導入100%達成は何と大阪が最初、水道水のオゾン高度浄水処理

水道水への高度浄水処理に使われている「オゾン」を今回は紹介したいと思います。パイプ内で通した水にオゾン照射するインライン方式によるものと取水地の水源にオゾンを広範囲照射したあとに沈殿濾過することもあります。これらはどんな違いがあるのか?などを環境面や設備のお話。そして東京より早かった大阪の導入達成の道のりを紹介します。

「水道水の基準は1ml中に100個以下の菌であること鉛のような重金属が皆無であること」

日本初のオゾン(注入)浄水処理設備

日本初のオゾン(注入)浄水処理設備

「地下水源に直接オゾンを外照射するわけとは?」
近年では、オゾン水を生成できるオゾン発生器も販売されていますが、今回は「装置」と呼ぶに相応しい大型設備のお話です。
地下水源の水脈に直接オゾン照射ランプをビルドインして、広範囲に浄化するシステムがあります。俗に「放流式、開放式」とも言われているタイプで厳密に殺菌汚濁除去というよりは大雑把に取水場所付近の水脈を滅菌するような用途に使われています。

例えば、工場が多いエリアの井戸水を飲用水に使う場合の予備浄水として実施し、取水してから活性炭フィルターやRO膜濾過+塩素殺菌するやり方です。
工場地帯などが上流にあり、取水地や浄化水槽設備が下流にある場合など設置することがあります。また開放式の緩徐濾過の浄水場がある場合なども活躍しています。大規模ビルドインタイプのオゾン注入(照射)設備の施工は広い範囲での環境保全に繋がっているかもしれません。

高度浄水施設

高度浄水施設

昔ながらの浄水水槽で、大きなプールに水を流して長時間かけゆっくりゴミや泥を沈殿させます。緩徐式濾過とは違い急速濾過では速く沈殿させるために吸着させる薬品等を添加します(上図だと混和池で吸着剤を投入します)が、言葉の通りゆっくり濾過するやり方でひとつ目のプールで木葉や大きいごみ、二つ目プールで更に上澄みを濁りがなくなるまで沈殿させます。ものすごい広大な敷地と時間が必要なため現在はかなり数が減っている状況な上、台風や地震などでダメージを受けると現状回復にも時間がかかります。東京の古地図を見ると、昔は原野だった新宿区1(何もないので番地がない)にも緩徐濾過の立派な浄水場がひっそりとあったようです。

オゾン接触池装置内部はこのような感じになっています。

オゾン装置の内部

オゾン装置の内部

全浄水場に高度浄水処理を全導入したのは何を隠そう笑いの街・大阪市でした

東京都より早く(現在2019年も順次導入中)大阪市は平成12年3月をもって上水道処理施設全てにオゾン高度処理を全浄水場に導入しました。

意外を越えてもはや奇跡としかいいようがありませんが「道頓堀もはや川ではない説」はあまりにも有名です。10数年くらいまえに阪神タイガースがこれまた奇跡の優勝を遂げ、心斎橋の通称ナンパ橋から優勝ダイブする勇者が続出する度にヘドロと不法投棄ごみがニュースで伝えられていました。*有名な惨事「カーネルサンダースの呪い」は伝説として現在も脈々と語り継がれています。
カーネルサンダースの呪い

カーネル・サンダースの呪い(カーネルサンダースののろい、英: “Curse of the Colonel”)とは、1985年(昭和60年)10月16日に、日本プロ野球球団、阪神タイガースの21年ぶりのセントラル・リーグ優勝に狂喜した阪神ファンが、カーネル・サンダースの像を道頓堀に投げ入れた因果で、翌年以降の同球団の成績が低迷したとされる都市伝説の一つである。出典:wikipediaより

大阪市は取水事情もあいまって「日本のまずい水道水ランキング10」にも不動の上位常連都市でした。苦肉の打開策でのオゾン導入となった経緯です。合わせてこんな高度処理設備もあります。

最新鋭の我ら大阪市庭窪浄水場のハイブリットシステム

引用文: 東芝HP「東芝レビューvol55」より概要抜粋。庭窪浄水場にに導入されているのは通常3回に分けられるオゾン注入を2回にしたハイブリッド型のオゾン処理方式です。兼用して何がよいのかと言えば、濾過層の砂利や上水道処理には欠かせない活性炭フィルターが長持ちするなどのコストパフォーマンス面が最大の利点です。

Q.ところで上水道、下水道のオゾン処理の違いは何ですか?
A.上水道では、塩素の代用で殺菌や脱臭、マンガンなどの重金属の酸化処理が重要です。塩素が少ない分、トリハロメタンの発生抑制も可能です。
A.下水道では、脱臭、分解微生物の処理、大腸菌などの殺菌汚濁除去ですが、浄水基準は排水リサイクルのレベルに応じます。

上水道でのオゾン注入は「前処理、中間、後処理」と3回行いますが目的で一番大きいのが塩素の削減です。汚い水ほど塩素で殺菌しなくてはならず、運ぶ距離が長いほど蛇口までの塩素濃度を維持しなくてはなりません。もうひとつは「発がん性物質」の抑制です
塩素が多すぎると化合物のトリハロメタンも増える→トリハロメタンの影響で発ガン性が高くなる
という負のサイクルを軽減するためです。

オゾン高度処理の普及拡大と呪いのカーネル

オゾン高度処理の普及拡大と呪いのカーネル
今回は「カーネルサンダースの呪い」という阪神が勝てない 口実 秘密に大阪市が頭を痛め、結果下水処理に大々的にオゾン注入を考えている、というお話です。
ちなみにタイガース優勝時に道頓堀に投げ込まれていたのは、川の底から異臭を放つ、ヘドロにまみれたカーネルおじさんの等身大人形でした。道頓堀では川に観光船が運行されており、安全対策のため川底清掃をしているのですがその際、重機に引っ掛かり引き揚げられたようなのです。見つかったときは「何でも投げよる関西人」と関西ローカル放送で自虐ネタが流れたくらいです。
「そうです、間違っているのですが大阪の河川がきれいでは面白くないのです」
本来、面白くなければ困る人などいないのですが関西の人は常に「何か見えない力」につき動かされ支配されているのです。いつでもどこでも何度でも何か面白いことを言わなくてはならない、特に東京者の見下した鼻に抜ける失笑をくらってはならぬ、という強い固定観念に突き動かされ、日夜見えない敵視線に曝され続け生きているのです。
そして近年、いきなりそれを払拭するかのように「道頓堀川再開発構想」と銘打って「道頓堀が市民のプールになる」というキャッチフレーズが躍り出でました。

プール施設の水槽循環にもオゾン処理設備はよく導入されますが、これがいわゆる大阪市がオゾン高度処理を下水に本格導入したという市民へのお知らせ発布になったというわけです。「なんだよこれ」と他府県民は思うかもしれませんが、環境問題さえも皆様が欲しがっている自分達のあるべき姿に対して及第点越えて来るのが大阪なのです。奥に見えるナンパ橋でテレビの人にネギを渡されれば一般市民ですら何か必死に考え始めるという県民性です。これぐらいできなくては下水河川で泳ごうなんて考えられるわけがないのです。ですが残念ながらこんなお知らせがありました。

2013年の10月に、大阪の道頓堀にプールを作ろうという「道頓堀プール計画」が発表されました。大阪のイメージを一新する可能性のある壮大な計画です。そして今年1月、計画中止がひっそりと発表されました。期待してたのに、、。
またみんなが驚くような喝采と激情の面白計画を成長させ、大阪行政に施行を期待したいものですね。それではまた。